26人が本棚に入れています
本棚に追加
持っている物を組み合わせて衣装に変えちゃうなんて、かおりちゃんはすごいなと感心する。
「そういえば、かおりちゃんがスカートを着ているのって、ちょっと新鮮かも」
「いつもは、パンツばっかりだもんね。……やっぱり、変かな?」
「そんなことないよ。似合ってて、可愛いよ。学校の日も、着たらいいのに」
「スカートじゃ、思いっきり走れないでしょ。木村を追いかけられなくなっちゃう」
冗談か本気か。かおりちゃんは、悪戯っぽく笑った。
「さ、食べよう。できたてが一番美味しいんだから。苺樺、オレンジジュースでいい?」
「うん。ありがとう、かおりちゃん」
かおりちゃんが、オレンジジュースの入ったコップを二つ運んできてくれる。
そのタイミングで、ピンポーンという音が屋内に響いた。
「木村くんかな?」
「タイミングのいいやつ」
言いながら、部屋を出て玄関へ向かうかおりちゃん。言葉とは裏腹に、表情が嬉しそうだった。そんな様子を見たこちらも、笑顔になる。
吉田くんも来られたら良かったのにと、少し羨ましくもあった。
「はあ?」
ふいに玄関口から聞こえてきたのは、かおりちゃんの声。呆れたような、戸惑うような色が含まれている。
どうかしたのだろうかと、わたしもかおりちゃんの部屋を出て、玄関へと向かった。
「お、佐藤じゃん! やっほー」
そこにいたのは、シーツのような白い布を頭から全身に被っているひとだった。
それは、木村くんの声で話している。
「え……木村くん、なの?」
戸惑いながら呼び掛けると、隣のかおりちゃんが盛大な溜息を吐いた。
「こんなことするの、こいつだけでしょ。小さな子どもじゃあるまいし。他にいたら引くわ」
「何言ってんだ。ハロウィンパーティーだろ? 定番のお化けじゃねえか」
言いながら、顔だけを出す木村くん。どうやら本当に、白くて大きな一枚の布を頭から被っているだけのようだ。
「何がお化けよ……って、吉田?」
「お邪魔します」
木村くんの後ろから現れたのは、吉田くん。
白いシーツお化けのインパクトが強すぎて気が付かなかった――わけではなく、彼は今しがたドアを開けて入ってきたのだ。
「急に来て、ごめん」
「良いよ。どうせ木村に捕まったとか、そんなとこでしょ?」
「まあね」
淡い苦笑を浮かべる吉田くん。わたしは彼の登場に、ぽかんと口を開けていた。
まさか、会えるなんて。だけどそのつもりじゃなかったから、思わず慌ててしまう。
最初のコメントを投稿しよう!