<4・現実>

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『何って、失礼だなあ。“ゲスト”様の姿だよ。みんなで一生懸命描いて、お祈りするんだ』 『お、お祈り?』 『そうそう』  その瞬間。楽しそうな教室の気配が、一瞬凍りついた気がした。さきほどまで笑顔だった大毅が、急に表情を消したからだ。そして。 『お祈りしないと駄目だろ?……どうか俺達を“食べるのをやめてくれますように”って』  何を、言っているのかわからない。  段々と、この夢に恐怖を覚え始めた夏俊。自分が見ている夢なのだから、過去の経験か、あるいは夏俊自身の想像が影響しているはずなのだが一切心当たりがなかった。へたくそな水彩絵具で描いてなお、あれだけ恐ろしいと感じる化物に心当たりなどない。どこかの映画やアニメで見たという覚えもない。  そんな化物を、ゲストとして迎える?俺達を食べないようにって、一体?これは、この夢は一体何を暗示しているのだ? 『大毅』  その時。突然誰かに、肩を叩かれた。振り返ればそこには、いつものように明るくちゃらけた雰囲気の一切を消し去った――真剣そのものの、聖也の顔が。 『そろそろ眼を覚まさないとやべえ。起きろ。……このまま夢の中にいたら、一生お前は目覚めることができなくなるぞ』  意味が、わからなかった。聖也はこちらが疑問を挟む余地もないというように、ただただ同じ言葉を繰り返すのみである。このままじゃまずい、早く目を覚ますんだ――と。  段々と、身体がふわふわとしてくる。目の前の、華やかな景色が蜃気楼のように揺らいでいく。夢が消えかけてきたところで、一瞬、ほんの一瞬だけ夏俊は思ったのだ。このまま目覚めていいのか、と。このまま起きれば、もっと恐ろしいことが待っているのではないか――と。  だが。 『起きろ』  人は、どれほど逃げたいと思っても限度があるのだ。  現実は、必ず追いついてくる。まるで影が、自分達の足元にぴたりとついて離れないように。  *** 「う、う……」 「夏俊」  目の前が真っ暗になり――夏俊はやがて、うめき声を上げながら意識を浮上させるに至った。身体が、重くてたまらない。その夏俊の傍に誰かが座っていて、必死で身体を揺り動かしているのがわかる。  女子にしては少し低めだけれど、でもとても温かい声。ああ、誰だったっけ、とつかの間思う。そうだ。 「さ、桜美、さん……?」
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