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おれはその日のうちに、信長の正妻、濃姫さまの侍女から情報を得た。
どうやら今、信長はお忍びで、京の本能寺に滞在しているらしい。おもな目的は、公家の者との密談。そのため、わずかな供しか連れていない、と。
…まるで暗殺のお膳立てをされているようだ。
嫌な感じがしたが、この好機を逃せば、暗殺の糸口すら掴めなくなるだろう。
おれは刀を持ち、急いで本能寺へと向かった。
しとしとと雨が降る中、泥をはね上げながら馬を走らせる。
京の都に到着した頃には、夜になっていた。
馬から降り、西洞院川に入る。
闇にまぎれ、なるべく音をたてないように川中を進んでいくと、城郭のような立派な寺があった。
…間違いない、ここが本能寺だ。
おれは川から上がると、土塀を乗り越え、本能寺の敷地に侵入した。
…目指すは信長の寝所がある、奥書院だ。
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