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「がっ!」
はっと目を開けると、光慶さまが、後ろから刀で胸を貫かれているのが見えた。
「なぜですか、父上…」
その言葉を最後に、光慶さまは倒れる。
おれは目を見開いた。
「…どうして、十兵衛さまがここに…」
十兵衛さまは息子の死体を見下ろし、悲しげに仰った。
「嫌な予感がしたのだ。光慶が昨日、『父上、敵は本能寺にあるのです』などと、含みを持った言い方をしておったのでな。
…光慶め、欲に目が眩みおって。権力だけを欲するものは、いずれ権力に溺れ、領民たちの姿が見えなくなる。我が息子ながら、情けないことだ」
死体に黙祷を捧げてから、十兵衛さまはおれに問うた。
「光雨。どうしてわしが、おぬしに諱である“光”の一字を授けたか、分かるか」
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