時は今 雨が下しる 五月かな

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「そうか。では、(わし)が新しい名をやろう。 …そうだな。こんな雨の日に出会うたから、“光雨(こうう)” はどうだ?」  訳も分からぬまま小さくうなづくと、その人は破顔した。 「共に城へ来い。 風呂と食事を準備させようぞ、光雨」  少年は目を見開いた。  このお方はただの侍ではない。  どうやら、城を預かる武将のようだ。  それなのに、こんな泥だらけの子供に名前をつけ、連れ帰ろうというのか。 「あなた様は、いったい…」  問う光雨に、その人は答えた。 「わしは明智(あけち) 十兵衛(じゅうべえ)(いみな)光秀(みつひで)と申す」  この時のおれは、あまりに幼過ぎた。  なぜ十兵衛さまが、おれに“光雨”……御諱(おんいみな)である“光”を授けてくださったのか。  その理由を考えることすら出来なかったのだから。
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