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「連歌か」
連歌とは、最初の人が五・七・五を詠み、次の人が七・七を詠み、さらに次の人が五・七・五を詠み…それを続けて一つの長い句を作り上げることだ。
この頃、戦国武将たちはよく連歌会を開催していた。連歌を奉納すれば、戦に勝利すると信じられていたのだ。ゲン担ぎのようなものである。
趣味と実益を兼ねたおれの提案。
興が乗ったのか、十兵衛さまはあごに手をあて、思案する。
「これまで主君である信長さまのため、そして領民のために、昼夜を惜しまず働いてこられたのです。たまにはゆっくりと和歌を嗜む時間があってもよいのではありませぬか?」
「…うむ。そうだな。
準備は任せると、紹巴に伝えておけ」
「はっ」
…よかった。おれの提案が、十兵衛さまの“既望”の月となったのなら、これほど嬉しいことはない。
だが、おれはまだ知らなかった。
この連歌会が、のちにとんでもない悲劇をもたらすことを。
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