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「永久は今 雨が下なる 五月かな」
詠みあげられる句を聞いて、おれはぼんやりと思案する。
(次の句で“雨”をどう表現するかによって、この発句が明るいものになるか、悲しいものになるかが決まるのだな…)
「第二句は、光雨、おぬしが作れ」
「えっ⁉」
おれは目を丸くし、固まる。
第二句は脇と呼ばれ、非常に大事なものだ。なのに、おれなんかに任せるなんて。
わたわたと筆を手に取り、目を泳がせながら必死に考え、墨もつけずに短冊に書こうとしてしまう。参加者たちは皆、声を上げて笑った。
「出来ましてございまする、が、このようなものをお見せするのが心苦しく…」
「いいから詠んでみい」
しかたなく、おれはおずおずと、脇の句を披露する。
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