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side凪
自室に向かう兄を見送った後、未練がましく彼が寝込んでいたソファーに腰を下ろして先程の出来事を反芻した。
ふらついた兄の身体を抱き寄せた時鼻先で香ったのは、起き抜けの熱っぽさとシャンプーの混ざった匂い。
俺の腕の中にすっぽりと収まった身体は男としてはひどく華奢だった。
(つい抱きしめて…変に思われたかも…)
思い出して身体がビクッと震えた。
それでも…空気を抱きしめて、続きを妄想してしまう。
(…首筋に顔を埋めて深呼吸して…)
(…それからキスをして、そのまま舌で全身を味わって赤い花を咲かせて…)
(…シャツの裾から手を忍ばせて…)
(…胸の先端を指と舌で可愛がって…)
(…それからズボンの中に手を差し込んで…)
(…晴くんの……)
(…晴くんに…)
(………不毛…だ…)
こんな妄想をするほどに、俺は小さな頃から兄のことが好きだ。
自分だけを見てくれる優しい眼差し。
慰め、寄り添い、俺の名を呼ぶ愛しい兄、晴海。
子供の頃は兄として慕っていたが、その気持ちは年月と共に恋心へと成長していった。
触れたい。
手を繋ぎたい。
キスしたい。
肌の温もりを確かめたい…。
…兄弟なのに…。
(…男同士なのに…)
この想いを悟られないようにしなければ。
こんな邪な感情を兄に知られて、拒絶されることが、怖い。
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