1.日ノ本神育成大学教授会

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1.日ノ本神育成大学教授会

 関東地方の梅雨入りが発表されたこの日、神界にある日ノ本神育成大学の教授会は人間界でのコロナ騒動を巡って紛糾していた。学長の天照(あまてらす)は手元の資料に視線を落としつつ口を開く。 「地上での新型コロナの流行は予定より五十年は早いですね。一体どういうことですか?大国主(おおくにぬし)医学部長」  いきなり意見を求められた大国主は、「学長、恥ずかしながら我々も原因が分かっとらんのですよ」と困り果てた様子で言った。  原因不明という大国主の発言に一旦議場全体がざわつくが、結局誰も発言することなく再び静まり返った。その時だった。議場の後ろの方で手が挙がる。 「あの…。学長ちょっといいですか?」学生支援担当部長の菅原だった。菅原は人間界で天神様と崇められる菅原道真その人である。生前の功績が認められ、死後はこの大学で事務職として再雇用されていたのだ。天照が頷くのを確認して菅原は続ける。 「それがですね…。現在、本学の神養成コースの学生は人間界にてインターン中でありまして…。その…。今年は例の学生が参加しているという報告が…」  議場が再び喧騒に包まれる。天照は、「嘘でしょ!?千年以上も留年し続けているあの学生が…」と驚嘆の声をあげる。そしてすぐさま、「すぐに連れ戻しなさいっ!今度こそ退学よ!」とヒステリックな口調で菅原に指示を出した。その時、天照の真横で会議の行方を見守っていた白髪の老人が柔和な表情を浮べ口を開く。
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