木の葉

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私は、もう長くない。 あの窓から見える、1枚の枯れた木の葉が落ちる時に私の命も尽きるだろう 思えば、つつましくも豊かな人生だった。 ありがとう。そしてサヨウナラ 私は再び窓の木の葉に目を向けると 木の葉は風に揺られている まだ、少し時間があるようだ…… こう見えても私は写真家を目指し、各地を転々としていた 青々とした野山、息を飲む絶景の滝、そして北極のオーロラ そんな景色を目にした今、何も後悔は無い ありがとう。そしてサヨウナラ 私は再び窓の木の葉に目を向けると 木の葉は、今にも落ちそうに揺れている まだ少し時間があるようだ…… 私には、たった1人愛した女性がいた。 将来を近い合い、結ばれる運命だった。だが、彼女は事故で帰らぬ人に、 君の元に、私も今からいくよ そして現世で彼女に会えた事 ありがとう、そしてサヨウナラ 私は再び窓に目を向けると 木の葉は、今にも落ちそうに揺れている まだ少し時間があるようだ…… 近所のラーメンは美味しい、セットでニンニクを少々加えてもいい ありがとう、そしてサヨウナラ 私は再び窓に目を向けると 木の葉は、今にも落ちそうに揺れている ……。 町外れのスーパーは水曜日がお得だ、買い物する時は行った方がいい ありがとう、そしてサヨウナラ 私は、薄目で窓に目を向けると木の葉は落ちてない 私はあらゆる物を投げつけるが、木の葉は落ちなかった。 もうネタが無い…… カーテンを閉め、私は静かに目を閉じた。 なんやねん、ロマンチックに死なせろや、とぶつぶつ言ってると 看護婦さんが 「○○さん、これ欲しかったの?」 と、あの枯れた木の葉を持って来てくれた。 「あ、ありがとう、そしてサヨウナラ」 おわり
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