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これは好都合だ
夜になり。
ダンカーは男の言っていた場所、鳥居の傍にある木に背を凭れて腕組みをしていた。そして、そこにいる浴衣姿の青年を観察する。彼は青い浴衣に灰色の帯を腰に巻いており、その色味に白く透き通った青年の肌がよく映えていた。皮膚が薄いのか、血色がよく表れている。しなやかな黒髪を耳にかけると、するり、と彼の頬を伝って零れ落ちる。その動きすらも何から何まで人目を引いた。そう、彼は美青年であった。
しかし彼は憂いを帯びた表情を浮かべており、水分量の多い瞳は、淡く光を反射している。
(昼間の友人はまだ来ないのか)
ジョニー以外に対して基本的に興味を示さないダンカーですら、彼の様子を心配していた。何故なら、男は鳥居の傍に佇んだまま、全く動かなかったからだ。青年はスマートフォンのディスプレイを眺め、長い睫毛に影を作る。彼が昼間約束していたらしい友人は未だ来ないようだった。青年ははぁ、と小さなため息を吐いている。
しかし、ならばこれは逆に好機とダンカーは考える。わざわざ引き剥がす手間が省けたからだ。ジョニーを、逸物を刈るには独りでいてくれるのは都合がいい。
青年は眺めていたスマートフォンを仕舞うと、、一人で人混みの中へと歩を進めていった。折角来たのだから、と一人で夏祭りを楽しむつもりらしい。すかさずダンカーは着いていく。どうにかして彼を人気のない暗がりへと導くべく、素晴らしい姿かたちであると推測できる青年の逸物への期待を胸に、後ろを追いながら男の背中を眺めていた。
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