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屋台巡り
彼は屋台一つ一つを指さし、ダンカーに店の説明をしていた。どうやらダンカーは夏祭りに行くのが楽しいらしい。ダンカー自身は別段ジョニー以外に興味はないが、話を合わせなくてはと伊織の言葉に耳を傾けていた。
「どれにしますか?」
伊織はダンカーの隣を歩きながら聞いてくる。正直どれでもいい。ダンカーはそう思っていた。
しかし、会場を歩いていると、ダンカーは一つの屋台を見つける。
「これは・・・」
ダンカーは思わず立ち止まる。それを見た伊織も足を止めた。
その屋台は、木串に大きなジョニーを刺して・・・ではなく、ソーセージを刺して鉄板で焼いたものを売っている店だった。
「フランクフルトですね。美味しそう」
青年も微笑んでいた。そうだ、これを買おうと二人で一本ずつ注文する。そしてすぐ、ダンカーの視線は隣へと移動する。
「肉団子ですか。いいですね、しかも大玉だ。2つセット売りなんですね。買いますか?」
ダンカーは伊織の問いには答えず無言で銭を取り出し、肉団子を2人分買っていた。そしてまた歩いていくと、そこには稲荷寿司を扱っている屋台があった。サンプルとして置いてある稲荷寿司は輝いて見えた。ふかふかのおあげにふっくらとした白米。そのどれもが光沢を帯びていてつやつやとしている。しかし、その店は好評だったらしく、もう稲荷寿司を売っていないように見えだ。立ち止まるダンカーと伊織の二人を見た店主は頭を下げて謝っている。
「すみません・・・。白米を切らしてしまって。もう、おいなりさんの皮しかないんです」
折角来ていただいたのに。お金はいらないのでお詫びに一枚ずつ、とタレに濡れたおいなりさんの皮を差し出してくる。二人はそれを肉団子の入った更に受け取る。
「ずいぶん買いましたね。ダンカーさん、お腹空いていたんですね」
伊織は楽しそうに微笑んでいた。ジョニーを渇望するあまり、少しでも特徴の似ているものを手当たり次第買っているだけではあるが。伊織はそんなダンカーの様子に気づいていないようだった。ここまで買ってもダンカーは止まらない。しかし、両手も塞がってきたので、最後にとダンカーは焼きそば屋に寄った。
「イカ墨焼きそば?前衛的ですね。細切りでしかも麺も短め」
そんなまるで湿気た毛のような焼きそばを前に、流石の青年も苦笑いをする。しかしダンカーは気にせず購入していた。それを二人前。俺は要らないと伊織は断れず、ちんg、もといイカ墨焼きそばを受け取った。
「満足した」
表情の薄いダンカーが目を少しだけ活き活きとさせていた。
「じゃあ、落ち着ける場所に行きましょうか」
嬉しそうにしているダンカーを見た伊織は嬉しそうに顔を綻ばせた。
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