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数十分後――
「みほ……」
「もうっ! しっかりしてよ、国生君! お家着いたから!」
クールな後輩の姿はどこへやら。顔を赤くしてるとか珍しすぎて可愛い。何も言わなかったけど、本当は嫌なことでもあったのか。ベロンベロンに酔っぱらっちゃった国生君に肩を貸してどうにか家まで連れてきたわけだけど……
「ん……」
国生君が鍵を開けて、これでお守り終了だって正直安心した。もう国生君にビール飲ませるのはやめよう。絶対に。
面倒臭いし、心臓に悪い。私の名前は八木沢美穂、それを名字も先輩って呼ぶのすらも面倒臭がり始めた国生君が名前を呼び捨てにしてくるとか、どういう試練なんだろう?
「ほら、ベッドで寝なきゃダメよ」
倒れ込みそうな国生君をどうにか支える。
本当はここで放置して帰りたいけど、イケメンを玄関に放置するのも気が引ける。風邪を引かれても困る。絶対私のせいだって言って慰謝料とか要求してきそう。いや、国生君も看病したい女ならいくらでもいると思うけど。
「美穂、泊まって?」
不意に耳元で囁かれて甘えるように囁かれて思考が停止する。
これはどういうことなんだろう?
あれ? 私は国生君に肩を貸してたんだよね……?
それが後ろから抱き締めるみたいにされて、顎を掴まされて後ろを向かされる。これが噂の顎クイ……?
「こくしょ……!」
国生君の綺麗な顔が近付いてきて、頭がパンクしそうだった。肌が綺麗で、無駄なことはしたがらない国生君も肌のケアは無駄じゃないと思ってるのかなってそんなことを考えた時だった。
顔に何かが触れたかと思えば唇で、でも、それは唇にじゃなかった。その横。それが何だか残念だなって思う。
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