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「次は唇にしていいっすか?」
「え……?」
そう聞いてくる国生君はさっきまでベロンベロンだったとは思えない。いつもの国生君のようで、何か違うスイッチ入ってる感が否めない。気のせいだと思いたいけど。
「やっぱする」
「んっ……!」
答えられない内に何が起きたかも瞬時には理解できなかった。本当にキスされてる……?
背中に当たる硬くて冷たい感触はドア? いつの間に体勢変えられて抑えつけられてるのかもわからない。
キスなんか久しぶりで、その感覚さえ忘れてた。こんなんじゃなかった気がする。国生君の舌がぬるぬる入ってこようとしてるし、苦しいし。
「んぁっ……は、ぁっ!」
そんなに大きく歳が離れてるわけでもないけど年下はないなって思ってたのに、翻弄されてる感すごい。
リードできるほど経験もないし、こういうことなら国生君の方が慣れてそうだけど、この省エネ野郎が恋愛をどうしてたかなんて知らないけど、入れ食いだったんだろうな……
侵入を許してしまった舌を絡めてくるのをどうしたらいいかわからないまま、ぼんやりそんなことを考えてる今はまだ余裕があったのかもしれない。
「こくしょっ……」
「美穂、可愛すぎ」
こっちはキスぐらいで息切れしてるのに、国生君は濡れた唇をぺろりと舐める。そんな仕草に妙な色気を感じる。
これ、本当に普段はクールぶってるくせに、妙に可愛いところもあったりする国生君? 第三の顔? これが雄の顔ってやつ? あと二回、変身残してたりしないよね?
「クールで攻めても動じないし、ギャップ萌えも通用しない。母性に訴えても無駄。こうなったら実力行使しかないだろ?」
これ、私に同意とか求めてないよね? するって宣言なんだよね……?
どうやら今夜は帰れないらしい。
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