庇護室

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 過不及無く、人当たりは良く。  波風立てず、良い人で在る。    だから仕方の無いことだった。  近い人にも遠い人にも、笑顔としか認識されないことくらい。  一時の悦楽の為に、お互いが合わない趣味や気分を繋ぎ合わせて、会話を作ることすら。望んでそう進んでいるのだから、後は勉学に励むだけなのだ。  決して裕福では無い家庭に、それでも尚育ててくれた親の為に、垣間見える期待に応えなければならない。  俺にとっての、当たり前だから。  そんな現実を、甘く溶かす存在。    ――俺は、恋をしている。  その相手は、一年前にクラスメイトとなり、気付けばいつも隣に居る存在となっていた。  純粋で単純で、子供らしい性格をしている。笑った顔が可愛くて、俺より小さい。  同性(・・)なのだけれど。  前に習って、暫く友達、そんな関係だと思っていた。  でも俺は、今更になって、この感情が恋愛感情だと認めてしまった。  昔付き合っていた女子に抱いていた想いとはまた違ったモノで、守りたいだとか、抱き締めたいだとか、そんな安易な熱情では無い。  形容しがたい、沸き上がるモノだった。  自分でも恐怖を覚えてはいたものの、幾度となく恋をしてきた時と同じく、好意を消すことなど出来ない。  引っ掛かるものは山ほどあれど、同性という事実が心に刺さっている。  だから俺は、あくまでも仲の良い知人として、アイツと触れ合って日々を過ごす。  アイツは俺の笑顔ではなく、俺の事を見てくれている気がする。そう思うのも、俺の都合の良い錯覚だろうか。              
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