庇護室

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 授業、休憩、放課後。  一生懸命、その言葉に頭を垂れるように、または物語の主人公のように、生真面目に生きている。だからこそ、充実感に振り回され、それ以上の刺激に手が伸ばせない。  俺がもし、本当に物語の中の主人公だったなら、アイツの背中に声の一つでもかけられたのに。  その後悔ですら、癖になってしまっていて。  月曜日は一緒に帰れただとか、水曜日はいつもより笑顔を見られただとか。  アイツとの幸せだけを積み重ねて、忘れられない今日の繰り返しを作っていく。    それが、当たり前、という認識になってしまっているのは、アイツと友達(・・)だから。  向こうは絶対に同性愛者ではないし、俺と居るときよりも、笑顔が咲き誇っている相手だっているわけだ。  俺には話してくれないだけで、想いを寄せている人物が既にいるかもしれない。  何事にも、上には上がいる。  二人きりという状況をここまで望むのは、他人が全て邪魔として目に映るのは、欲望の満たし方を知っているから。  物理的な方法っていうものを知らないだけで。    そもそも俺だって、男が好きってワケじゃない。  俺が好きなのは、アイツなのに。 「な~んか早えよな×××、もう一年だぞ。お前んとこクラス替えねえらしいけど、どうなん?」  部活帰り、仲間と駅までの道のり。  生暖かい空気を吸い込みながら、まだ薄暗い空に浮かぶ朧月に、届くはずのない溜め息を吐きかけていた。  なんせ周りからも似たような話題が飛び交っている。  世間一般に言う夜、こんな時間まで居残るのは、大抵運動部だったり。 「なんか可愛い子とかいねえの?お前結構モテんじゃん、ほらあの子とか――」 「マジでやめろって」  やばい、と思っても時は戻せない。  自分ではないような、怒りを孕んだ声は、とても冗談には聞こえはしないだろう。  最近、どうもおかしい。 「あぁ、ごめんごめん……」
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