庇護室

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 冷め切らないうちに弁当を食べ終えた。  腹より胸が満たされた俺は、自分の部屋に戻ろうとする。  仮にもあんなことを考えてしまった罪悪感や羞恥心を冷ますように、廊下の窓から外を眺めていた。映るのはただの暗闇だ。  ふと、後ろ髪を引かれるように時間の存在を思い出す。  いい加減勉強を始めないといけない。  そう思って、階段の方へ向かおうとした時だった。  物置の扉が微かに開いている。  中は外のように真っ暗で、しかしどうしたものか、俺は扉から誘われているように感じた。  自分でも気違いなのは分かっている。  が、閉めろと言われているよりかは、中を覗け、と言われているような気がしてしょうがなかったのだ。  ゴクリ、と固唾を飲み込む。  足音を引き連れ、俺は一歩一歩踏み出していった。  目前まで来ればもう怖気付くこともなく、容易く半開きのそれを開ける。  言わずもがなそこにあった物はいつも通り、掃除用具や予備の日用品だ。別にそれ以上のものはない。  如何せん俺の中の痼りが消えないもので、物置の中を物色し始める。  灯一つもなく余計見づらい。  とはいえ散らかしたら怒られるだろう。後で戻しておかないと―― 「うおっ」  突然、俺の足が何かに引っ掛かった。  鉄か何かだろうか、ひんやりとした感覚とちょっとやそっとでは動かない硬さも伝わる。  不鮮明な脚部の痛みと、見窄らしい自分の声。  その発生源を辿れば、そこには取手のようなものが床から出ていた。この下にも収納出来るようになっているのか。十何年と生きてきたが、初見だ。  此処には何が待っているのだろう。  興味が惹かれるがまま、俺は被さった段ボール箱や袋をどかし始める。開け口は四角いみたいだった。  全てを視認した時も僅か一瞬に感じるほど、行き場のない焦りと好奇心に背中を押されていた。  プレゼントを貰った子供のように、取手を引っ張る。 「階段……?」  まさかの事態に妙な夜風が全身をなぞった。いや、気持ちの面だけではなく、本当に吹き抜けているようだ。    考えられるのは、部屋。  地下室だろうか、物置であることに変わりはないのか、秘密が隠されているのか。凄く、狭そうだ。    俺の頭に浮かぶ言葉が、何かを紡ぎだしている。
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