かけっこ

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かけっこ

小学校一年生の時の運動会のこと 確か五月の頃だと思う 四月から始まった小学校の生活も慣れたころ 小学生の初めての大きなイベントである 小学校は6学年あるから 1年生はそんなに出番は多くはない 学年のゲームが玉入れがあって かけっこ後は遊戯がひとつ そして最後の全校生徒の子供盆踊り 上級生が行う鼓笛隊や応援合戦なんてのもない それでも我が子の晴れ姿で 家族そろって父兄の観客席に 家族で陣取って両親だけでなく 場合によっては祖父母の姿もあった 我が家は孫も多かったので 祖父母が見に来たことはなかった 父はいわゆる子煩悩ではなかったし 特に教育熱心ではなかったが 父親参観含めても一度も欠席はしなかった 長男の運動会には少しは期待もしていたのだろう 父も頭の方がいいが運動は人並み それを考慮すれば大いなる期待はすべきではなかった まずは小学校一年生のかけっこが始まった 直線の距離を背の低い順から クラスで二人くらいづつが順にスタート 私は背は高い方だったので 最期から一つ前のスタート この頃は身体能力も 一般的には背の高い方が高くて 私の体力が人並みだとしても 6人の中では遅い方になっていた 幼稚園では一番になったことはないが 障害走で2位になったこともあった でも結果は現実で6人中6位のまま 小学校の運動会は終了した 昼には家族と母が心込めた弁当を みんなで食べるのだがその時すでに父はいなくて どうしたのかと母に問うと 運動会が終わる前に帰ったとのこと 子ども心に私のかけっこの結果に 帰ったのかなと思ったりした イベントの後には小学校では 作文を作ったりするのが通例で 次に書いたのが私の運動会での詩 かけっこ かけっこでびりになってしまった さいしょはよんとうくらいだったけど おとうさんはかえってしまいました ところがこれが小学校の代表の詩に選ばれて 川崎市の詩集に掲載されたのです 大人になってこのことを母に聞くと 父はギャンブルが好きだったので この日も競馬を見に帰ったのだろうとのこと 五月と言えばオークスかダービー 一番人気のトウメイが負けた年のようで きっとそれを東京競馬場に見に行ったのだろう その後大人になっても 父とその話をしたことはないので その時どういう気持ちだったのか 一度聞いてみたかった気もする
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