序章 : 私、コンシェルジュになります!

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翌朝、手短に朝食を済ませると、パソコンで求人情報をくまなく検索する。 自分に適した仕事はあるか、勤務条件はどうか等、あらゆる角度で。 何件か目星を付け電話をかけてみる。 正社員の求人は、大抵が履歴書や職務経歴書を郵送し、書類選考のうえ面接に進む場合のみ連絡が来るというものだった。 本やサイトを参考に、自分でもなかなかと思える書類が作成できた。 心を込めて封を閉じ、ポストの神様に献上するかの様に、両手でそっと丁寧に投函する。 ――よしっ。 達成感で、体の内にどんよりと沈殿していた重だるい気分は、いつの間にか外気へ消え失せていた。 ――それから数週間後。 一社面接までこぎつけたものの不採用、その他の会社も書類選考で不採用となり、相変わらず無職の状態が続いていた。 貯金残高はその間も減り続け、それに反して私の鬱屈した気持ちは増すばかりだった。 たいして外出もしないし、無駄遣いもしていないはずなのに…… 何をせずとも決まった時間に空腹になるのだから困る。 そんな呑気な自分のお腹にまで腹が立ち、やけになって名前のない自作のダンスを部屋で踊ってみる。 おどければおどける程、惨めになるし余計にお腹が減るだけなのに…… 踊り疲れて呼吸も整わないまま、フローリングに寝転ぶ。 冷たすぎない丁度いいひんやり感。 久しぶりに思い切り体を動かしたせいで、頭にまで酸素が届いていないような、くらくらした感覚が襲う。 ……あー、もうどうにでもなれ。いっそずっとこうしていたい。 目を閉じても、まだグルグルと私の思考まで混沌としていた。 ――プルルルッ。プルルルッ。 スマホが鳴る。 面倒臭いなぁ。もう応募してた案件もないはずだし…… しばらく無視を決め込んでいたが、相手もなかなか引き下がらなかった。 ――はいはい。分かったよ。もうっ。 通話ボタンを押すと聞こえてきた声の主は意外な相手だった。
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