十年目のふたり

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 俺は高校時代に初めて詩織に出逢ってから、心を奪われ、そこから詩織への想いを募らせていった。  一年生の時に同じクラスになり、そこからは三年間一緒で、自然と俺と詩織との間には友達としての友情が芽生えた。当時野球部に所属していた俺の試合などには応援までしに来てくれた。大した成績を上げることはできなかったが、詩織は一生懸命声を上げて、俺に声援をかけてくれた。  大学入試が近づく中で詩織と同じ大学に行くことを俺は決心する。しかし、部活に没頭していた俺からすれば詩織の志望していた大学はなかなか厳しい大学であった。熱心に勉強する俺に詩織はまた声援と共に勉強の手助けまでしてくれた。その頃にはすっかり詩織のことを友としてではなく、異性として。自分の好きな女性として詩織のことを見ていた。  勉強を教えてもらう時に不用意に近づいてくる詩織にはドキドキさせられたし、疲れたからと言って、俺のベッドで寝始めた時は勉強どころではなかった。  そして、大学の合格発表当日。二人で向かった大学にはそれぞれの番号があった。詩織は自分の番号を見つけた時よりも、俺の番号を見つけた時の方が声をあげて喜んだ。その瞬間、俺は今しかないと感じて、詩織に想いを告げた。  そんな俺の告白に、詩織は驚いた様子もなかった。ただ、合格発表の嬉しさなのかわからないが、涙をすっと流して「はい。こちらこそ」と言ってくれた。  二人で入った大学での生活はとても楽しいものであった。大学での友達もできて俺たちはお互いに楽しみ、お互いの友達にたまに自分たちのことなんかをいじられたりもした。でも、そんなこともなんだか嬉しいような、むず痒いような感じで楽しい思い出の一つだ。  そんな大学生活を過ごし、四年の秋。就職などが落ち着いた時に二人で計画して、二人だけで来た大学旅行の中で、俺は詩織に結婚を申し出た。  夕暮れの中、浜辺で想いを告げた俺に対して、詩織は、今度はにこっと笑って、「はい、こちらこそ」と言ってくれた。
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