快晴

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 聞こえなかったんだ。仕方がなかった。だってあんなに激しい雨が降ってたんだよ?聞こえるわけがない。しかも全然止まなかった。何時間経っても、弱くもならなかった。ずっと強いままだったんだよ。しかもまだ止んでないじゃないか。俺のせいじゃない。雨音以外なにも聞こえないんだから。だから俺のせいじゃない。   どれだけ拭いても汗が出る。どれだけ飲んでものどが乾く。リビングの窓から日光が直射してくるせいで家に居ても肌が真っ黒になりそう。こんなにもクソ暑いなかアイツは全裸で突っ立っている。まだ雨が止んでいないらしい。傘もささずに立ち尽くして何も聞こえないふりをしている。身体は塩味の効いたびしょ濡れ。やっぱ暑いんじゃねえか。どうせ今回も深いとこまで考えてない。雨が強くて何かが聞こえなかったってことだけ決めたけど、その内容まで考えてないんだろ。最初の方はそこそこ凝ってたのに最近手抜きなんだよな。しかもなんでわざわざ窓の方向いてんだ。めちゃくちゃ眩しそうな顔してんじゃん。めっちゃ我慢してんじゃん。アホだ。笑える。    今回はどれだけ耐えられるだろうか。「やまない雨」のテーマももう17個目。あれ、18だっけ?もう限界だ。俺はこんなことをするために俳優になったんじゃない。誰か助けてくれ。お願いだ、解放してくれ。誰か。    声は聞こえない。雨がうるさいからだろうか。  
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