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「さて、みんなどこを読む?」
ずらっと並べられた開会式の原稿を皆で覗き込む。
我が校の放送部は部員5名の全員2年生。
47都道府県で選抜された学校紹介のアナウンスをするのが3人。
開会式での司会進行を2人に分けて、その中で誰が分担するかを話し合っていた。
私は学校紹介のアナウンスか〜。原稿をひと通り読んでみると全然知らない高校ばかりだし、なんだか読めない所もある。
「これから大変になってくるけれど、皆頑張っていこうね。」
バカにされちゃ駄目だ。そして、全国から来てくれた選手達が嬉しい気持ちになって貰えるように、私達で迎え入れたい。
華の言葉に皆は深く頷き、拳を天井につきあげた。
「頑張るぞー!!えいえいおー!!」
さて、夏休みと言えば忘れてはならないのがお祭りでして…
部活が終わったら直ぐに近くの図書館に集合していざ出陣。
彼氏無しのメンバーをかき集め、浴衣デート中の友達をいじり倒した後みんなで虚しい気持ちになったというなんとも素敵な夜を終え、翌日から練習漬けの日々が始まったのでした…。
そして気付けば8月4日、決戦の時。
思い返せば練習はそれはもう毎日大変で。
普段は優しい顧問の先生も全国大会という名前で気が張ってるのか、とても厳しくて
何度も怒られ、トイレで部員と泣きながら励ましあった。
普段はゆるゆるの我が校放送部が、厳しい練習をしているという噂を聞きつけた他の先生が、
教え子のアナウンサーまで連れて来てくれて、みっちり夜まで練習に付き合ってもらったり。
運動部が帰る準備をしてる中、外で発声練習、声の調子が悪い時は校歌を大声で歌った。
通りがかりの運動部から少しバカにされるのも、放送部の試練なんだよね…。
そうやって毎日努力を重ねて、遂にこの日。練習の成果を発揮する日が来た。
大丈夫、大丈夫だよきっと。
バスに揺られながら、清涼ヶ山高校放送部員は現地に向かっていった。
「うわぁ、会場広いね〜、あのステージに立って私たちしゃべるのかぁ」
クーラーのかかった大きなホール。
私達しか居ないからはしゃぎまくり。
華が真っ先にステージに登り踊り始め、皆で続いて遊び回る。
今までステージなんて立ったことないから、アイドルになった気分…。
それからぞろぞろと大人の人達が入ってきて、
午前中に綿密なリハーサルを行ったあと、午後3時に、いよいよ本番。
慌ただしく大人達が動き回るなか、
私たちは外に行き、メモ書きしすぎてボロボロになったアナウンスの原稿を片手に読みの練習をひたすらしていた。
そして本番30分前。
ステージ裏からイケメン探しをする部員が居たり、
トイレに駆け込んでまつ毛を上げたり香水を付けに行く部員が居たりと、少し余裕が出てきた。
どれだけうちの放送部は男に飢えてるのだろうか。まったく、恥ずかしいんだから。
とか言いつつ…
「ここの高校の読み方分からないんダヨネ〜」とか理由つけて客席に降り、
とことこ歩いて沢山の男子ソフトボール部員に
「すいませーん、○○高校とお読みしても大丈夫ですか?」
って聞きまわったのは私ですが…へへっ
さぁて、次は山田工業高校を聞いてきますか…。
やまだって読むんでしょ、絶対読み間違いするわけないけどサ
…おや??
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