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山田工業高校…イケメンが沢山!!!
いやイケメンって言うか周りの高校がひたすら坊主だし、この高校だけ異様に髪があったから目立っただけかな…。
工業高校だから女子に飢えてそうだなぁ。 なんて馬鹿な偏見を持ちながら、私は声をかける相手を探す。
あ、あの端っこに座ってる背番号16番の人でいっか。オーラ的になんだか怖そう。
「あの〜、すいません」
16番くんが振り返る。
つり目がちな目がキョトンとして私を見ている。サラサラした前髪を横に流していて、なんかクールな爽やかイケメンって感じかな。
私はかわいい子犬系男子が好きだから、タイプではないかな…あ、いやいやいかん!!私は仕事目当てだ!
決してイケメン狩りに行こう!とかではないぞ!
「ええっと、やまだ工業高校とお読みするんですよね?」
「…あ、いや。違います。やまたです。」
えっ…やまた!?あっぶない…本番で間違えるとこだった。
ていうか先生なにも言わなかったじゃん!あ、気付いて無かったな!?
ステージでスタッフの方とニコニコ話している先生にガンを飛ばした。
「はい、分かりました。やまた工業高校ですね。ありがとうございます、それじゃ失礼いたします」
なんだか恥ずかしくなってそそくさと出ていこうとすると、
「…君がアナウンスするんですか?」
私の背中から声が聞こえてきた。
あ、私に声掛けてるのかな!?びっくりした。
「えっ?あ、はい!!」
「あ、そうなんだ、がんばれ。楽しみにしてるから。」
「はい!!あ、ありがとうございます!そちらこそ、明日から試合、頑張ってください!!それでは!!!!」
頭を思いっきりさげると、手にしていたアナウンスの紙がファイルからまとめて飛び出していく。
なんだ君たち、ご主人様のところにかえってきなさぁあい!!!
自由を手にした原稿達はそれぞれ私の手から離れていく。
バッサァバッサァァ…って、このやろ。反抗期かよーーー…。
紙がスローモーションで落ちていく。
うわぁあぁやっちゃったぁぁあぁあ!!!
そう思っていた時、16番くんが大きな腕で拾い上げた。
へ…すごい瞬発力…。
「ははは、おっちょこちょいかよ」
笑いながらそう言って、私に原稿を手渡す。
その笑顔は可愛らしくて、ついドキッとしてしまう。
ホール内はクーラーが効いてるのに、私はというと顔が火照って仕方ない。
きっと耳たぶまで真っ赤なんだろう。
原稿をぶちまけた事や16番くんの笑顔やら…
色々なんだか恥ずかしくって。
「ごめんなさい、ありがとうございます!!」
16番くんは「ウス!」と軽く微笑んで帽子を取って頭を下げた。
あ、柔軟剤の優しいいい匂いがする…。
こういう礼儀正しいところ、やっぱり全国大会の選抜メンバー…。
うちの高校の野球部にも見せてやりたい。
部活の先輩が挨拶を返してくれないと、うちのクラスの野球部がシュンってしてたな…
16番くんに軽く会釈すると、原稿をしっかり握って戻る事にした。
他の高校の坊主さんが私が通りがかると前髪の分け目を気にするフリをしたり、
(いや坊主だろ!!というツッコミは内緒)
「ヤダ、今日臭かったらどうしましょう!」とか言って笑いをとっていた。
いややっぱり強豪でも中身は変わらんのかい!ほんで君達も女子に飢えてるんかい…。
ステージ裏に戻ってしばらくすると
開幕のブザーが鳴る…。そろそろはじまる。
開会式の総合司会をするのは部長の華。
華はステージに歩いて行き、高らかと読み始める。
「令和〇年度、全国高校総体、男子ソフトボール大会。開会式を行います。」
ファンファーレがホール内に鳴りひびき、気持ちがピリリと引き締まる。
「それでは、各都道府県からの精鋭、47チームのご紹介をします。」
次は、私の出番…。
ひなたは華と入れ替わり、舞台袖にいる仲間に見送られながらステージ袖から歩を進めた。
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