協界

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 時は20XX年、人間とAIが共存していることは言うまでもなく、多くの面で人間の力を遥かに凌駕したAIの活躍は人間に恩恵をもたらした。仕事・研究・家事等々は主にAIが行い人間の生活は格段に「楽」になった。特にAIが主体となって研究を行うようになってからの世界の変わり様は凄まじかった。人間が生み出したAIはその研究対象を人間にまで拡大し、人間自らでは解明できなかった人体の謎を次々と解明していったのである。  AIがこぞって研究のテーマとしたのは「脳」と「感情」である。人間の脳は謎が多く「人間の脳は約10%しか使用されていない」といった説がまことしやかに語られていた時期もあったほどだ。また「感情」というものも謎が多かった。 まず、実態がないのである。計測できない、確認することができないものに対してのアプローチは非常に難しいものであった。「脳」「感情」について人間の研究は一定のところで足止めになっていたが、メカニズムや異常を来す原因をAIが解明したのである。  それらが解明されたことによって、飛躍的に進歩した分野が精神医療だ。精神疾患と呼ばれる症状の多くは、過度なストレスがかかることで脳内神経伝達物質の分泌・受容に何らかの異常が生じ、発症するものとされてきた。しかし、それ以上の決定的な機序や仕組みは長年解明されてこなかった。  様々な症状が報告されている精神疾患の中でも特に謎が多く、メカニズムが解明されていなかったのは複数の人格が同一人物の中で交代して現れる多重人格である。しかし、AIの研究によりこの病気の発症メカニズムも解明されたのだった。このことは世界中で大ニュースとなり多くのAI・人間両側の研究者・医者達が歓喜した。 そんな中、日本のとある会社がこのメカニズムを逆手に取ったある機械を開発した。これにより人間の世界はガラッと変えられていく。
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