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響戒
アイモトさんは感情表現が豊かで喜怒哀楽がハッキリとしていた。その分、落ち込むことも多くその度にオトミヤさんは論理的に慰めていた。ある日小さなミスをし、落ち込んでいたアイモトさんに「勤勉型」のオトミヤさんがこう声をかけたことがあった。
「『鏡』使ったら良いんですよ。そうすればこんなに落ち込むこともありません。今の様に落ち込んだり、ストレスを溜めるのは効率的ではありませんよ」アイモトさんは俯きつつ淋しそうに笑いながら
「……さすが論理的ですね。……でも、良いんです。鏡は使わないと決めているので……いつも心配していただきありがとうございます」と答えた。
「ワタシはあなたが好きです。でも、『鏡』を使わないことだけは納得できません。何か理由があるのなら教えてください」冷静な問いかけにアイモトさんは顔を上げ、相手の目をジッと見ながら、そっと呟いた。
「だって『別人』になりたくないから。いくら記憶が共有されているからと言ったって、ベースがその人の主人格だって、結局は技術で『別人』になっているだけじゃないですか……『別人』になりたくない。自分自身でいたいんです」
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