1-1: 表側

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1-1: 表側

「紹介しよう、この度ウチの営業部に配属になった新入社員のみんなだ」 フロアの前にずらっと並ぶ新入社員。その中に佐古島幹夫はいた。祖父に買ってもらった高級ブランドのスーツを纏い、人一倍に胸を張って堂々としている。 右から順に新人の自己紹介が始まり、幹夫は自分の番になるのを胸を高鳴らせて待っていた。 どいつもこいつも一流大学の出身ばかりだったが、幹夫はつまらない自己紹介だと内心、侮蔑の念を向ける。 幹夫自身はこの中でも浮くほどの三流大学出身、いわゆるFランと呼ばれる部類の大学出だ。だが臆することはなかった。 この超一流企業は度重なる面接で俺の素質と才能を評価したからこそ、自分は今ここに立っているのだと信じてやまない。 勿論、一次面接の現場社員面接では面接直後に担当者を出待ちして、その晩に夜の街を接待するのは勿論のこと、モデルの女友達も紹介し(高級ブランドのバッグを人数分買うハメになったけどな!)合コンのセッティングもしてやった。 二次面接の人事部面接では先程の接待に加えてお土産(札束)をくれてやった。 しかし役員面接ではコンプライアンスが厳しく、裏工作をする隙間も機会もなかった。 だが、それでも内定を勝ち取った。きっと最終面接での俺の流暢なトークと熱い思いが伝わったに違いない。 つまり、実力で俺は手に入れたんだ。超一流企業の内定をな! 幹夫はほくそ笑んだ。俺は選ばれたのだ、と。 そう、この内定に隠された真実も知らずに……
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