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生まれ変わっても余の妻に
小雨がやみ、幾分か視界が晴れた。側室としての王宮の暮らしの中では、歩くことなどなかったので、彼女の足はすぐに痛くなった。この逃避行も今日で三日目になる。
(王様と一緒ならどんなことでも耐えられる。このまま逃げ切れずに死んでも悔いはないわ)
寒さと不安を笑顔で隠す。握られた手のぬくもりだけが頼りだった。
「貴人よ」
「はい。王様」
「余が王でなかったなら……」
「王様でなかったなら?」
「そなた一人だけを妻にしたと思う」
隣国から攻め込まれ、王宮にも危険がせまっているとわかった時、王は、王妃と他の8人の側室を置いて、彼女だけをここへ連れて来てくれた。正直どちらが安全かはわからないが、自分を選んでくれたことがうれしかった。
「それでは、次の世で、わたくしだけを妻にしていただけますか?」
「約束するよ。生まれかわっても必ずそなたを見つけ出す」
「高い壁があるかもしれませんよ?」
「超えてみせよう。そなたは余のただ一人の妻だ」
つないだ手に力が入った。その時、前方から内禁衛の護衛が走ってきた。
「王様、本日の宿が見つかりました。ご案内いたします」
「さすがだ。ホン・テユン、頼りになる」
その時、護衛の目は、王と貴人が指を絡め、固くつないだ手に釘付けになった。
それは人目のある王宮では決して見せることのない姿だった。
※貴人……朝鮮王朝時代の二番目に位が高い側室。
※内禁衛……朝鮮王朝時代の王の親衛隊。
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