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「ワタクシといっしょにいることで、ごしゅじんサマのメに、“ういるす”がみえるようになったはずデス」
「ウイルスが、見えるように?」
それを聞いた女はすぐに勘づいた。
「まさか、あれが」
「ハイ。ういるすデス」
予想通りの答えが返ってきて、女は口角を持ち上げた。
「なるほど。ウイルスが目で見えるのなら感染する心配はないわね。さすが無病息災の妖怪だけあるじゃない」
それから女はウイルスを避けて歩くようにした。白い物体を発見すると、十分距離を取り、アマビエを抱え早足で駆け抜ける。また、体にウイルスをくっつけた人間が歩いて来る時は、物陰に隠れやり過ごすようにした。
「フフ、何も知らずウイルスをつけて歩いてるわ。バカなおっさん」
そのうち女は足を止めた。通ろうとしていた前方の道が、どこもかしこもウイルスで溢れ返っていたからである。
「……この道はダメね」
女は脇道に逸れ、回り道をする羽目になった。
その後も行く先々でウイルスに行く手を阻まれ、その度に進路を変更していく女。
気がつけば普段は通らない橋の上を渡っていた。
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