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「まさかこんなに町中にウイルスが蔓延(はびこ)っているなんて……。恐ろしくて外に出れたもんじゃな……」  異変に気づいた女は言葉を失った。  前方から、ウヨウヨと動く真っ白な壁が迫って来ている。 「ち、ちょっと……ヤバくない?」  その正体を見破った女は、慌てて踵を返し来た道を戻ろうとした。だが、 「う……嘘」  後方も同様に、白で視界を埋め尽くされていた。  逃げようにもここは橋の上。逃げ場はただひとつしかない。  女は欄干から身を乗りだし下を覗いた。6メートル下方に、川が流れている。  今、飛び込まなければ確実にウイルスの餌食となる。しかもあれだけ大量ならば重度の感染者になることは免れない。 「き……きゃああああッ!」  覚悟を決めた女はハイヒールを脱ぎ、川へ身を投じた。
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