9/11
前へ
/20ページ
次へ
 口から水を吐きむせかえる女。そこへ尚もウイルスの魔の手が忍び寄る。 「ひいっ! 早く逃げなきゃ……!」  腰が抜けたのか、四つん這いのまま逃げようとする女。アマビエはずぶ濡れのスカートを掴んで言った。 「ごアンシンください。カレらはういるすではありません」  女の口から「へ?」と間抜けな声が漏れる。 「カレらはワタクシとおなじヨウカイ、“ケセランパサラン”デス。マッタクのムガイなのでごアンシンください」  昨夜、女のマンションを出て行ったアマビエは、ケセランパサラン達にこう頼んだ。 『こらしめたいニンゲンがいる。ぜひチカラをかしてほしい』と。  こうしてケセランパサラン達にウイルスのフリをさせ、当初の予定通り女を川へ落とすことに成功したアマビエ。  これで女は改心し、これからは妖怪に情を持って優しく接してくれるだろう。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!

3人が本棚に入れています
本棚に追加