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「ママ! この子欲しい! 買って買って!」  少女はガラスケースの中のそれを指差し、母親に無垢な眼差しを向けた。 「ちゃんと仲良くできるの? 前みたいに飽きたりしない?」 「うん! 仲良くする! 大切に飼うよ!」  少女の熱意に根負けした母親は店員に声をかけた。 「すみません。あの妖怪、見せて貰えます?」 「はい。“キジムナー”ですね? 先週沖縄から入荷したばかりのいい子ですよ」  この世界では、“妖怪”が売られている。  我々が犬や猫を飼うように、この世界の人々は妖怪ショップで気に入った妖怪を買い、ペット感覚で一緒に暮らしていた。  妖怪は一説に霊体エネルギーが具現化した存在だと言われている。ゆえに食事や排泄など生きる上での行為をする必要が無い。なので手間もコストも一切かからないので、もはや玩具や人形を買う感覚に近かった。
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