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 買ったばかりのキジムナーを肩に乗せ、嬉しそうに店を出ていく少女と入れ替わりに、サングラスをかけた女が入店した。  真っ赤なリップの側にはほくろがあり、長くツヤのある黒髪も手伝い妖艶な雰囲気を漂わせている。 「いらっしゃいませ」 「例の妖怪、入荷した?」 「はい。ようやく手に入りましたよ」  奥の方へ案内された女は、檻の中に入れられた妖怪と対面した。  人間の女性を思わせる長い髪。鳥類を思わせるくちばし。鱗に覆われた胴体。それを支える三本の脚。 「この子さえいれば病気になることはないのね」 「はい。無病息災の妖怪でございますから」  女はサングラスを取ると、鉄格子越しに柔らかな眼差しを向けた。 「今日からよろしくね。“アマビエ”ちゃん」
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