青春とは、なんでしょう。

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青春とは、なんでしょう。

青春とは何か。 青い春と書くそれは、非常に抽象的で、あやふやだ。 あなたにとっての青春とはいつですか。 そう聞かれたら、私はきっとあの事を思い出す。 中学校三年生の、あの夢のような一年を。 目を瞑るといつも思い出せる。 ペンを握ると思い出せる。 日々の小さな仕草ひとつでさえ、みんなとの思い出が蘇ってくる。 あのカビ臭い、半分物置と化していた教室で。 建て付けの悪い、扉の向こうで。 独特の匂いのする木の机で。 私達が笑い合ったあの日々を。 もし、時間があるなら私の話を聞いてほしい。 そして、これは、間違いなく8人の物語だ。 もう、全員で集合出来ないとしても。 大まかな結論を言えば、 これは、8人が7人になり、それぞれが羽ばたいていく、問題児達の話だ。 「ね、次の春はみんなで桜見れるといいね。」 泣きそうな顔で笑う小川がぽつりと零す。 「もちろん!ね、紗季。」 春樹ちゃんが、私に話しかける。 「…うん。みんなが進路決定したら、お花見行こうね。」 ね、と横の席にいる柳川に話しかける。 「そうだね。2人とも、勉強は捗ってる?」 ん、とこちらに振り向く二人は、どちらも良く焼けている。 野球とサッカーを頑張っている証拠だ。 「おいおい、嫌なこと言うなよ~。俺はサッカーで世界行くから進路は決まってるようなもんなの!」 「同じく。ま、俺は元がいいからな。」 はは、と笑う二人に思わず笑みが零れる。 「そういえば武田は?寝坊?」 「んん…見てないな、そういえば。寝坊じゃねえの?」 そんな話をしていると、ばたばたと廊下を走る音が聞こえた。 「武田!待ちなさい!!」 生活指導の声が聞こえる。 「やっべ!!窓開けて!」 「はいはい。」 今まで黙って本を読んでいた大西が仕方なさそうに教室の横の窓を開ける。 何故扉から入らないのか、と思ったが扉は箒で詰められている。 「こうなることわかって昨日戸締りする前にせっせと細工してたわよ。全くくだらない。」 私の視線に気づいた大西が説明してくれる。 「ね、なんで追いかけられてたの?」 私はおはようを言うのも忘れて、武田に聞いてみる。 怒られているのは日常茶飯事だけど毎回その理由が面白くてついつい聞いてしまう。 「ん?ほら、ここ」 耳を引っ張るとそこにはぷつりと小さな穴。 「わ、わ、大丈夫?」 わたわたとする私の頭にぽん、と手を置きぐわんぐわんと回しながら笑う武田。 「あァ、これ。ピアス開けてみたんだが、どうだ?」 「わ、かっこいいよ!でもちょっと痛そう」 にこりと笑う武田に釣られて笑う。 ここのクラスは総勢8人。 あまりにも少ない人数だが、田舎ではなく、都会でもない。 他のクラスはひとクラス40人程。 此処五組だけ、8人。 体育は他のクラスと合同、授業はもちろん別。 なぜ、そんな事になっているのか。 それは、全員に何かしらの問題があるから。 他の生徒とは一緒くたに出来ないやむを得ない事情のある問題児が集まったクラス。 それが五組、通称特別少人数クラス。 これは私が、このクラスで卒業するまでの物語。
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