六月、雨と共に流れる涙は。

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六月、雨と共に流れる涙は。

「もうずっと雨ね」 暑い、と下敷きで仰ぐ春樹ちゃんに相槌を打つ玲奈ちゃん。 「んー、ジメジメすると何にもする気起きないね」 「紗季でもやる気出ないとか、そういう日あるんだ。いつもやる気万全って感じなのに」 小川がにこにこと笑っている。 「私もやる気ない時は無いよ〜。うう、じめじめ…」 そういえば峰田と遠田と柳川と武田が居ない。 どこ行ったんだろう、と言おうとした時、扉が開いた。 「お前ら!!俺らを尊敬しろ!」 「なんですか!」 探していた四人が嬉しそうに入ってくる。 遠田の嬉しそうな顔につられて敬語で返す。 「エアコンの鍵取ってきた!」 峰田がガチャガチャとエアコンのコンパネを弄る。 「取ってきたぁ?盗んできたんじゃ無いの?」 「玲奈…」 いまいち信頼感のない人達が取ってきたことに不信感マックスで聞く玲奈ちゃん。 普段なら此処で小競り合いが起きるのだが、そんな事も無く。 「柳川と山田の名前出したらまあ大丈夫だろうって渡してくれた。俺らには信頼感ねェんだろ」 吐き捨てる様に言った武田だが特に気を悪くした様子は無い。 これだから大人は、と言った諦めの目だ。 「ほらでも、エアコンもうちょっとで効いてくると思うし、このムシムシした教室もちょっとはましになると思うよ」 柳川が微笑む。 空気をからりと変えてくれるのはエアコンではなく柳川なのかもしれない。 「柳川、武田、峰田、遠田、ありがとう。」 お礼は大事だと思い一人一人の方を見て言う。 「四人ともありがと!」 「…ありがと。」 「今度からは僕も連れて行ってね。ありがとう」 私に続いて春樹ちゃん、玲奈ちゃん、小川が声を掛ける。 その声にほくほくと満足した様子の四人。 「次なんだっけ?数学?」 「そうだよ〜。海口先生、ちょっと遅いね」 エアコンが効き始め、チャイムが鳴ってもう5分は経っている。 何かあったのだろうか、いつもルーズだと言われてしまえばそうなのだけれど。 「悪い、遅くなった。良い子にしてたか〜?」 「全く、舐めて貰っちゃ困るぜ。まるで俺らが悪い子みたいな言い方!」 「そりゃ悪かったな遠田。そんでこの前ガラス割ったの誰だっけ?」 全く、と踏ん反り返っていた遠田がギギギ、と動きが鈍くなる。 「それは秘密の…」 「別に頷いたわけじゃない。ほら、大西が震えてるぞ?」 チョークで玲奈ちゃんの方を指す先生も中々意地が悪い。 「あんたまたやったの!?本当…何か壊さなきゃ気分晴れないとかそういうんじゃないの!?」 線が切れた様に怒りだす玲奈ちゃんにたじろぐ遠田。 「大西ぃ〜そんな怒らないでくれよ〜ちょっとサッカーしてたら夢中になっちゃったんだよー」 「そもそもガラスの近くでサッカーするとかどういう状況な訳?何があったらそんな事やろうと思うの?」 玲奈ちゃんの詰問は止まらない。 授業、しなくて良いのだろうか。 にやにやと観戦している海口先生の方を見るが止める気配は無い。 「まあまあ大西、そこら辺で…」 「何?もしかしてあんたも一緒にサッカーやってたとか言うんじゃ無いでしょうね」 「うぐっ」 図星だったらしい峰田が沈没する。 遠田と峰田は仲が良いのでいつも一緒に居るが、今回はそれが裏目に出た様で。 「遠田は調子乗りなんだからあんたがしっかりしなきゃいけないでしょ。…海口先生は怒らない人なんだから、自分で学習しなさいよ、ばーか」 「馬鹿…馬鹿…」 峰田はいつもは怒られないタイプだから余計にその言葉が刺さった様だ。 「先生、そろそろ授業に入られた方が良いかと」 玲奈ちゃんの溜飲が取り敢えずは下がったのを見て春樹ちゃんが手を挙げて発言する。 「大山…天使か…」 「流石に可哀想だから今回は口出ししてあげる。反省しなさいよ?五組の評判が下がるんだから。」 天使と褒める遠田に溜息一つで許してあげる春樹ちゃんはやっぱり大人だ。 かっこいい春樹ちゃん!と言える度胸は無かったので心の中で呟いとく。 「ん〜、じゃあやるか。いや、半端に違うクラスからこの事聞いた方が大西が怒ると思ってな。先生は遠田の事を思ってだな」 「絶対嘘だ…」 未だ放心中の峰田がぼそっと呟く。 先生は楽しそうに見てたので私もそう思う。 「じゃあ授業入るな〜。教科書24ページ開け〜」 丁度予習していた所で少し嬉しくなりながら、授業の声に耳を傾けた。
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