パパは友達じゃない

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28歳のケンジと4歳年上のシオリは同じ会社で出会った。ケンジと同じ営業部でシオリは派遣社員として事務の仕事をしていた。隣りの席になり、ケンジは色々と仕事を教えていた。会社の食堂でたまに昼食を一緒にとる仲となり、付き合うようになった。 ケンジから「付き合って欲しい。」と言ったのだが、その時、シオリはすぐに返事をしなかった。ケンジの告白からしばらくたってもなかなかシオリからの返事はなかった。職場では何事もなく、いつものように同僚として接していた。 ケンジは痺れを切らして、昼休みに食堂でシオリを見かけ、前の席に座った。シオリは少し緊張した面持ちになった。なかなか本題に入れず、部長の悪口や顧客の愚痴などを言いながら、食事をした。昼休みが終わりに近づいていたためなのか、シオリの方から切り出した。 「この前の返事なんだけど、わたし3歳になる子供がいるの。シングルマザーで仕事の時はわたしの母が娘の面倒を見てくれているの。だから、付き合うのは・・・たぶん、難しいかなと・・・。」 ケンジは納得できなかった。シオリの気持ちが何も語られていなかったからだ。派遣社員でいつも帰る時間を気にしていたし、かわいらしいキャラクターの弁当を持って来ていたこともあったので、もしかして、子持ちかなと想像はしていた。子供がいても構わないとケンジは思っていた。 シオリは責任感があり、仕事をキチンとこなしている。清潔感があり、控えめなところもケンジは気に入っていた。ケンジは比較的、おちゃらけた性格で周りを盛り上げようと頑張る生粋の営業マンなのだが、シオリといる時は穏やかな空気を感じ、話題を振らなければと焦ることもなく、リラックスしていられると感じていた。 「オレは気にしないよ。子供が好きだし、仲良くなれると思う。君と一緒にいたいんだ。」と昼間から、しかも、社内でキザなセリフを言ってのけた。シオリは少し周りの目を気にして、 「じゃ、まずは娘に会って。話はそれから。」と言った。
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