パパは友達じゃない

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ケンジの携帯電話に大学時代の友人サトルから二人目が生まれたから遊びに来いよというメッセージが届いた。サトルは高校の時から付き合っていた子と大学卒業と同時に結婚した。奥さんはまだ産後一ヶ月が明けたところでまだ少し疲れが残ってはいたが、社交的な人でケンジたちの訪問を喜んでいた。サトルの上の子はサキと同じ年だった。ケンジたちにきちんと「こんにちは。」とあいさつをして、一人で静かに遊んでいた。 奥さんはケンジたちの食事の支度をし、サトルが友人たちとゆっくり話ができるようにテーブルを分けてセッティングした。隣のテーブルでは奥さんと上の子が二人で食事をしていた。すると、子供が 「ニンジン嫌い。ブロッコリーもいらない。」と言っている。 奥さんは 「ダメよ。ちゃんと食べなさい。分かった。だったら、一つだけなら残してもいいから。」と言うと、子供は 「いらない!!!おいしくない!」とお茶碗をひっくり返してしまった。サトルはサッと席を立ち、子供の手を引いて、奥の部屋へと入っていった。子供はサトルに連れていかれる間、号泣していた。部屋からもサトルの少し怒っている声が聞こえてきた。しばらくして、サトルだけが部屋から出てきてケンジたちの席に戻った。サトルはみんなに途中で席を外したことを謝罪した。ケンジはサトルの行動に驚いていた。サトルもそんなケンジの様子が分かったようで、 「今のうちにしっかりしつけておかないと、後で大変になるからね。悪いことをしたら、ダメと言って反省させないと。ママにあんな口を聞いちゃダメだと言ったんだ。ママにごめんなさいって言えるようになったら部屋を出てもいいと言ったから、もうしばらくしたら、部屋から出てくると思うから心配しないで。」と言った。 奥さんも「心が痛むけど、しっかり教えないとね。」と言っていた。 そのとおり、しばらくして子供は部屋から出てきて、奥さんの元へ行き、 「ママ、ごめんね。」と言っていた。それから奥さんは子供をギュッと抱きしめた。サトルの元にもやってきて、ギュッとハグをした。子供はまたおもちゃの元へ行き、一人で楽しそうに遊んでいた。 そんな3人の様子を見て、ケンジは少し感動した。親子とはこういうものだと感じていた。それに比べて、自分はサキと親子になれるのだろうかと考えていた。
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