パパは友達じゃない

5/6

0人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
ケンジはシオリに結婚について話し合いたいと言った。シオリも最近、ケンジとサキがうまくいっていないことを気にしていたので、結婚は白紙に戻そうと言われるのではないかと不安な思いを抱えていた。ケンジは自分の思いをシオリに語り始めた。 「結婚したい気持ちは前に話したとおりで変わっていないよ。でも、やっぱりサキちゃんとは友達ではなく、親子になりたいんだ。家族になるんだから。たぶん、俺たちの間に子供が生まれると思う。そうすると、その子にとってオレは父親なのに、サキちゃんにとっては友達っておかしいだろ?友達は家族にはなれないんだよ。サキちゃんにはパパがすでにいるけど、もう一人パパがいてもいいんじゃないかな。オレはサキちゃんのパパとして、ダメなことはダメだと教えたいし、信頼もされたい。ボクはシオリとサキちゃんに頼りにされる夫であり、父親になりたい。シオリだけが子育てをするんじゃなく、オレも子育てに関わりたい。家族ってそういうものだと思うんだ。少なくともオレはそういう家庭を築いていきたい。」 シオリは黙って話を聞いていた。泣きもせず、笑いもせず、考え込むような表情を浮かべていた。 その夜、シオリはサキを寝かせる前に童話「3匹のこぶた」を読み聞かせた。最初のわらの家と2番目の木の枝で作った家はもろく、簡単に吹き飛ばされてしまった。しかし、3番目の家はレンガでできていたので、頑丈で吹き飛ばされることはなかった。シオリはこの話を読みながら、家族について考えていた。ケンジは父親になりたいと言った。それはレンガの家を建てようとしてくれているようにシオリは感じた。土台がしっかりしていないと、家族というものはもろく壊れてしまう。夫婦は片方だけが親になるのではなく、親として子供に向き合う必要がある。そこがしっかりしていれば家族は壊れないと思った。
/6ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加