幸せの味

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「こんなのを記念にしなくても、もっと良いモンくれてやるよ」 ……我ながら恥ずかしいことを言った気がする。 頼仁の頬に赤みが差した。目線も右往左往と忙しなく動いていて、分かりやすく照れていた。 フ。健気だねぇ。 そんな様子がなんとなく可愛く見えて、笑ってしまう。 「……これからのこと、考えてくれてるんだね」 は? 本当に妙なことを言う奴だな。 「当たり前だろ、付き合ってんだから」 目を丸くした頼仁に、 ほら、行きたいところ案内しろよ。とせっついて前を行かせる。 適当に歩いて繁華街まで行くと、いつの間にか俺の半歩後ろを歩くようになっていた。何故。 よく分からないが、後ろにいられるとどこに向かうのか分からねぇだろ。前いけ、前。歩くペースを落として前を歩くように促してやった。 ─── ── 「ここ、かな」 ……マジか。思わず口角が引きつった。 行きたいところ、というのは最近リニューアルオープンしたというパンケーキの店だったらしい。 「パンケーキ、好きなのか」 そういえば食ったことねぇな。なんて思いながら質問を飛ばした。 「うん。パンケーキっていうか、甘いもの全般好きかな」 へぇ。と小さく頷いた。 いわゆる、スイーツ系男子ってものだろうか。 女性が好みそうな店の外観になんとなく尻込みしてしまう。なんだろう、このアウェー感。 中性的な美形であるコイツはスイーツが似合いそうだが、俺のような強面で大柄な男は絶対に浮く。間違いない。 できればあまり入りたくない空間の1つだ。
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