幸せの味

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しかし。 「俺、自分が甘いもの好きだからここに決めてしまったけど、宗介は甘いの大丈夫? ……あ。そもそも、男2人で来るようなところじゃないよね、ごめん」 なんて分かりやすく落ち込まれてしまったら、行きたくないなんて言葉が口から出てこなくなった。 俺自身は甘いのはあんまり得意じゃなくて、菓子つったら専らスナック菓子しか食わないけど。まぁ、なんとかなるだろ。 「頼仁の好きなモンが知れて良かったって思ってるから気にすんな」 俺より低い位置にある頭を掻き回す。柔らかな髪が鳥の巣へと変貌を遂げたが、それさえも似合っているのには少し笑える。美形って強い。 店内に足を踏み入れると、 「いらっしゃいませーっ」と元気な声に迎えられた。 やはり、というか。女性のお客さんが多いようだ。案内してくれている従業員さんも女性だし、なんだか居た堪れない。 心なしか、色々と視線を感じている気がする。 2人用のテーブル席に案内され、メニューを受け取った。 ……この店員さん、分かりやすくガン見したんだよなぁ。目を爛々と輝かせているあたり、陽太と同族だと見た。 居心地の悪くしている俺とは反対に、メニューの隅から隅まで目を通している頼仁はこの視線に気づいていないのか。はたまた、注目には慣れているのか……。 いや、多分これは前者だな。メニューを見ているだけなのに目を輝かせている。 「宗介は何にするか決めた?」 やべ。メニューすら見てなかった。適当にパラパラと捲り、1番写真がでかいものに指をさす。 「ストロベリーパンケーキ? 美味しそうだよね。俺もそれと迷ったんだ」 「へぇ、頼仁は?」 「チョコバナナパンケーキにするよ。楽しみだなぁ」 この様子だと、俺が全部食べられなくても頼仁に任せることもできそうだ。 偶然……(?)通りかかったさっきの店員さんに、注文をした。よくこのテーブルの前通りますね、お姉さん。
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