幸せの味

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ふぅ、注文だけでどっと疲れた。肩の力を抜いて、背凭れに寄りかかるように深く腰を掛ける。 「なんか、夢みたいだ」 急にどうした。首を傾げた俺に答えるように、小さく笑った頼仁。 でも、目は笑っていなくてどこか痛々しい。 「『好きな人から告白された』っていう思い出欲しかっただけなんだよね。それなのに、こうやってデートまでしてもらってる。……夢なら覚めないでほしいくらい、幸せだよ」 「……待てよ」 お前、何を言おうとしてるんだ。目の前のコイツは今にも泣き出しそうな顔で、俺の制止する声に首を振った。 「ごめんね、宗介。ううん、東くん。君の告白は、俺が仕組んだことなんだ」 ━━え? お待たせしました〜。と、テーブルに置かれた2枚のパンケーキ。あんなに楽しみにしていたはずなのに、ずっと俺の目を避けるように俯いている。 「陽太くんに勉強を教えた見返りにお願いしたんだ。罰ゲームでも何でも良いから東くんが告白するように仕向けて欲しいって」 ボソボソとした口調で、全てが自分の策略だったと語る頼仁。 あぁ。なるほど。そういうことか。ずっと不思議だったが、漸く点と点が繋がった。 「お前かよ〜……アイツが自信満々だった理由って」 そりゃあ学年1位から教えて貰ってたら自信も付くわな。羨ましいぜ、コンニャロー。 「え、いや、今はそんな話をしてるんじゃなくて」 「アイツに勉強教えるの大変だったろ」 俺なら5分で嫌になるね。 だってアイツ、復習しねぇからすぐ忘れるし教え甲斐ねぇもん。 そんなアイツが飛躍的に点数を上げたあたり、頼仁の優秀さが窺える。
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