幸せの味

13/15
前へ
/15ページ
次へ
「た、確かに大変だったけど、そういうことじゃなくて!」 話を逸らされたと思ったのか、頼仁は声を荒げた。 ━━お前も声荒げたりすんのな。 なんか意外だわ。なんて。一体俺は、頼仁を何だと思っていたのだろう。 本当、コイツのこと何も知らねぇのな、俺。 でもさ、そんな俺でも 「気付いてたよ」 とはいっても、お前が陽太に勉強を教えてたところまでは分からなかったけどな。 大方、そういう趣味のある陽太が首を突っ込んだんだろうな。くらいだったし。 まぁ、うん。言わないけど。格好付けたいし。 「な、なんで……」 声が震えていた。目を丸くして、俺の目をじっと見つめている。 妙だと思ったのは、陽太の淡白さだ。強引に告白させた割に、結果を訊く時はヤケにあっさりと引き退るんだもんな。そこが一番気になるところだろうに。俺が言わないと決め込んだとて、普段のアイツなら1週間くらい付き纏ってくる癖に。 加えてお前は、たかがルーズリーフを『記念』なんて言って大事に持ってたしな。ご丁寧に折り畳んでよ。 これからのことを考えてくれているんだね、っていう言葉も引っかかった。 ━━まぁ、今にして思えば。陽太が小テストとはいえ9割強の点数を取ったことが一番妙なことではあるが。 点数を見せられた時には、台風がくるんじゃねぇかと本気で心配したものだ。快晴だけれども。
/15ページ

最初のコメントを投稿しよう!

14人が本棚に入れています
本棚に追加