幸せの味

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「俺、好きなコいねぇよ。知ってんだろ」 つい最近、彼女と別れたばっかだぞ。 目尻を吊り上げて、告白の相手がいないと訴えるが、 「大丈夫ダイジョーブ。ちゃあんと、俺が段取りしておいたからさ!」 奴は得意げに言い放った。 「段取り?」 何をしたんだ。首を傾げた俺に、 「ちゃあんと、呼び出してるよ。お前の告白する相手」 ……これほどまでに俺はコイツを殴りたいと思ったことはない。 「なんと、衣更を呼び出しておりまーっす!」 ダブルピースをして、ケラケラと笑っている陽太に、思いっきり顔を顰めた。 陽太が呼び出したという衣更という人物は、学年で1番イケメンだとクラスの女子たちからランク付けされた男だ。 もう1度言う。『男』だ。 俺、東 宗介もまた『男』。 コイツは男が男に告白し、フラれる姿を見たいと言っているのだろうか。 二次元でそういったジャンルに熱を入れているのは知っているが、リアルでそれを見たいと他人を巻き込むのはただの悪趣味だ。 コイツは遂に次元をも超えてしまったかと呆れてしまう。
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