幸せの味

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賑やかな教室に、頼仁とタイミングをズラして戻った。 奴は「一緒に戻ろ?」と目を輝かせていたが、頑なに首を振ってやると諦めて先に帰っていった。俺はお前と違って注目されるのに慣れてねぇっつーの。 「よぉ、どうだった」 自分の席に座ると、諸悪の根源が一応といった様子で訊いてきた。 なんでお前はそんな興味なさげなんだよ。どうせ罰ゲームにしたんなら責任持ってもっと興味持てよバカ。 わざわざ訊いてきたってことは、 「なんだ、見にこなかったのか」 俺の告白して玉砕する様子を見て楽しみたいんだと思っていたが……。あまりにも淡白過ぎやしないか? 何のために罰ゲームさせたんだか分かりゃしねぇ。 「だれがそんな悪趣味なことするかよアホ。んな野暮なことしねぇ」 悪趣味なことをさせたお前がそれを言うか。説得力が皆無すぎる。 「んで、結果は」 形ばかりの問いに、馬鹿正直に答えて驚かせてやろうと思ったがやっぱり辞めた。 コイツは悪趣味な男ではあるが、口の軽い奴ではないことは知っている。 そこは信用しているのだけど、場所が場所であるし、頼仁からすれば不快に感じるかもしれない。 それにその類の話は注目を集めやすい。特にアイツは、話題問わず注目の的だ。アイツの一挙一動にギラついた目で見ている連中がいるからな。 万が一にも《衣更頼仁は同性愛者だ》なんて噂が立ってしまったなら目も当てられない。 罰ゲームとはいえ告白したのは俺だから、俺がどうこう言われる分には構わない。いや、もちろん傷付くんだろうけど。 頼仁は罰ゲームに巻き込まれた側だし、何より俺のことが本気です、好き、みたいだし……より一層傷付けることになるかもしれない。それは申し訳なさすぎる。 散々迷った挙句 「秘密。俺と、アイツだけのナイショにしとくわ」 言わないことにした。
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