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俺が何も言わないことを悟った陽太は、元々興味もなかったこともあってか
「ふぅーん。んじゃ、もう訊かねぇから安心しろ」
あっさりと引き下がった。
どうせ引き下がるのなら、嘘告白の段階で引いてくれりゃあ良いものを……。
一つ息を吐いた。
───
──
睡魔の襲う授業を終えて、校門前でぼんやりと空を眺める。
ちなみに頼仁は担任から呼び出しをくらった。優等生でクラス委員長というのはなんとも面倒なものらしい。
元々押しに弱い気質があるのだろう。必死に断っていたが、担任の押しの強さに押し切られていた。
半ば引き摺られるような形で担任に連れられたアイツの目が「ごめんねごめんね」と雄弁に語っていたのには少し笑ってしまったが。
目は口ほどにものを言う、とはこういうことなんだろうなぁ、なんて。
まぁ、まだ時間はだいぶかかりそうだ。
教室はスマホ厳禁なので外に出たが、良かっただろうか。
すれ違いになるのも面倒だし、一応伝えとくか。
緑色のアプリを押すも、頼仁の名前は友達一覧には載ってなかった。ゲ、そういえば交換してなかったな。
また後で聞いておこう。
とりあえず、靴箱と机の中にでも紙を突っ込んでおくか。
校門前で待っている、とルーズリーフに書いてそれぞれに適当に入れた。
それなら教室で待ってた方が早いと思わなくもないが、現代っ子でスマホを手放せない男子高生にとって暇つぶしのない待ち時間ほど苦痛なものはないのだ。
友人の下校を見送りつつ、SNSをチェックする。
あ、あの漫画の新刊出てんのか。後で買いに行こう。なんて頬を緩ませていると
「待たせてごめんね!」
わざわざ小走りでやってくる頼仁に、そんな慌てなくてもいいのに。と小さく笑った。
その手には、几帳面に四つ折りされている紙が存在している。多分俺が突っ込んだものだろう。
俺の視線に気が付いたのか、その紙をバッグの中に素早く入れて
「あ、えっと……記念、にね」
何も悪いことなんてしていないのに、叱られる前の子供のようにソワソワし始める。
……怒らねえっての。妙なことを言うやつだな、とは思うけど。
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