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ずるい女
「”彼女”を特別法定終末者に指定する事は心苦しいのですが、精神の病んだ航空戦艦と共存できるほど社会は盤石でないのです」
維持費と安全保障の問題よね、と咲子は施設長を看破した。
「エリサ・スウェンスキーという人間態に主権はないんですか?」
「ご存知でしょう。いつ暴れるか判らない生体航空戦艦と肉体は一心同体です。分離手術で彼女は死ぬ」
「だったら、宇宙の一角で厳重監視のもと、自由に泳がせてあげれば」
「ですから、予算が」
「ほうら、やっぱり厄介者なんだ」
「貴女ねえ!」
施設長は金切り声をあげた。そして機銃の如くまくしたてる。「一隻の艦を一ヵ月稼働させるコストを計算すれば?それも彼女たちが持ち前の超生産能力を活かして電動カートの千台でも造ってくれれば採算があうわよ!愚痴ってふて寝するだけの凶器にどんな価値があって?」
しばらく悪態をついたあと、施設長の電池が切れた。すると、咲子はにっこりとほほ笑んだ。
「言ってる内容は言語道断だと思います。でも、あたし、正直な人って一番信用できるんです」
「ああら、そうかしら」
施設長は腰に手をあてて、そらをあおいだ。
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