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僕の婚約者
僕の彼女を紹介しよう。
まちがいなく、世界一のかわいらしさだと思う。天使のような愛くるしい微笑み。いや、天使が束になっても敵わないだろう。
彼女との出会わせてくれた神様に心から感謝したい。これはマジ、運命だったと思う。彼女は天から、僕の元に舞い降りてくれたのだ。これまでの暗くて悲惨な人生も、この瞬間に報われた。
彼女は光り輝いていた。薄汚れたコンビニの制服姿だった僕とは、別次元の存在だ。一目で魅せられてしまったと言える。
愛くるしい唇から発せられる言葉は天の調べだったし、とぎれない微笑みはまさに天使のそれだった。
おっと、仕事を忘れてはいけない。レジに13桁の番号を打ち込んで、バッグヤードから該当する荷物をとってきた。ネット通販のお取り寄せである。彼女は支払いをポイントで済ませ、僕の差し出したボールペンで受け取りにサインをした。
彼女の名前を見た時、僕は雷に打たれた。忘れられない名前だった。僕の初恋の女性と同じ名前だったのだ。同姓同名で、一字も変わらない。
まさに、運命の瞬間だった。将来、結ばれるべくして、僕たちは出会ったのだ。
しかし、僕には理性がある。客観性と判断力もある。何といっても、彼女の両親に許しを得なくてはならない。成し遂げるためには、僕の大きな愛を誠心誠意、伝えるしかないだろう。
ああ、そうだ。彼女の結婚年齢も気にかける必要がある。一緒になれるまで、あと十年ほど待たなければならないし、その頃には僕も還暦になってしまうけど、それぐらいはどうということもない。
了
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