Honesty is the right choice

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一郎はコンコンと二度ノックをして部屋に入った。おそらくは役員と思われる威厳のある男が二人に、人事部のお偉方と思われる威厳のある男との三対一の面接の形となった。一次面接と二次面接が一対一(サシ)での世間話やお茶飲み会話同然の空気だった故に、この雰囲気の違いに「さすがは最終面接」と一郎は気圧されそうになった。 一郎は自己紹介をした後、パイプ椅子に座ることを促された。ここに座った瞬間より、彼の負けられない戦いが始まる! 最終面接が始まった。まず始めに面接官(人事部のお偉方と思われる男)が開口一番を放つ。 「弊社では約束を守る誠実さを持つ方を求めております。このことを念頭に置いた上で面接に望んで下さい」 人として当たり前のことじゃないか。一郎はそう考えながら反射的に「はい!」と、高らかに返事をした。面接官は「元気で宜しい」とニッコリ微笑む。 それからはお決まりの「志望動機」「自己PR」「会社で何をしたいか」「会社でどのような役割を担いたいですか」と、言った答えが似てくる意地悪な質問が飛んでくる。その意地悪な質問であるが、面接官からすれば「入社意欲や企業(ウチ)とのマッチ度を見るために当然知りたいこと」であるために、それぞれに違った答えを用意することが望ましい。 これらの質問が終わった後に大学時代の経験について重点的に尋ねられる。いや、これまでの人生についてと言う方が正しいだろう。 「大学時代に打ち込んできたことは」「これまでリーダーシップを執るようなことをしてきたか」「あなたのグループの立ち位置を教えて下さい」「あなたのいいところは」個人の特徴を知るための質問が次々と投げかけられる。自分のことは自分がよく知っていると言うが、実際は良くは知らないもの。この辺りは親兄弟友人に恥ずかしながらも聞いたから完璧だ。一郎はこれらの質問を飄々と上手く躱していく。 ここまでで二十分、一つの質問につき一分から二分、長くても三分程度に纏めているためにこれぐらいの時間経過はしていて当然だ。しかし、緊張に緊張を重ねて、時折、頭の中を真っ白にして何を言っているか分からなくなっていた一郎にとっては一時間、いや、永遠にも思えるぐらいに長く感じているのであった。 さすがに最終面接であるせいか質問も多い、一郎に気疲れの様子が徐々に出てきている。 しかし、面接官は容赦なく次の質問を投げかける。 「十年後、どのようになりたいですか」「十年後、二十年後、あなたは当社で何をしていると思いますか」「あなたに夢はありますか?」と、将来の展望について尋ねられる。妄想レベルではあるが「役員になりたい」「大学生はまだ子供であるために責任感のある大人になりたい」などと言った未来の展望を用意していた一郎は言葉に詰まらずに淀みなく説明する。面接官達も一郎のしっかりとした将来展望に耳を傾けていた。 ここまでで四十分、最終面接としては標準的な時間である。あらかた質問を終えていた面接官は「最後の質問」に入った。 「えっと、これから最後の質問に入ります。この質問は最終面接を受けて頂いた皆様全てに聞いております。皆様の発想力や応用力を見るためのものですので、気楽にお答え下さい」
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