想像すらしていなかった胎盤剥離

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想像すらしていなかった胎盤剥離

病院へ向かうタクシーの中でお腹が激しく痛みだした。病院へ着くと痛みは収まった。やっぱり陣痛だったのかな。陣痛を経験したことがないので、どんなものなのか分からない。会ったことのない医師がやっと現れ、診察台へ。長くエコーを見ていた医師の言葉は 「赤ちゃんは残念ですが・・・。」 こんなことってあるだろうか。おなかの痛みは陣痛なんかじゃなかった。現実として受け止められず「あ、そうですか。」という感じで主人に伝えた。二人でただ茫然とするだけだった。悪い夢を見ているようだった。医師からは 「赤ちゃんを出さないといけないですが、お腹を切るとお母さんの負担が大きいので、膣口出産しましょう。」 と言われた。 わたしは一人産婦人科の一室に連れて行かれた。この部屋は男性禁制なのでご主人はとりあえず家に帰ってくださいと言われた。日本語をまだろくに話せない主人が夜中にタクシーを呼んで、帰れるはずがない。主人にどうするか問うと、タクシーの心配よりも子供をなくした妻を一人残して帰るわけにはいかないと言い、病院の受付で待つと答えた。
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