序章

1/1
2人が本棚に入れています
本棚に追加
/36ページ

序章

「アイカ。女の子だったらアイカはどう?」 子供を望み始めた頃、どこで見たのか、聞いたのかブラジル人の主人が娘の名前を「アイカ」にしようと言いだした。わたしが提案した名前は全て却下され、主人が自分で見つけてきた唯一の名前だったので、わたしはすんなり「いいよ。」と答えた。次はわたしが漢字をつける番。 愛らしい花。 愛される花。 愛に満ち溢れている花。 「愛花」に決めた。かわいいわたし達の愛花に出会うまで長いトンネルをあてもなく歩いているようだった。 仕事でブラジルに行き、初めて友達になった子に教会へ誘われた。そこで主人と出会った。家が近かったため一緒に教会へ通うようになっていった。いつも周りにいる人のことを気にかけ、困っている人がいたら放っておけない人。辞書を片手に根気よくわたしと接してくれた。そんな優しい彼に惹かれていった。わたしの両親は心配していたかもしれないけれど、わたしたちの結婚を認めてくれ、結婚式に参列するためわざわざ遠いブラジルまで来てくれた。結婚式の数日前が彼とわたしの両親との初顔合わせだった。
/36ページ

最初のコメントを投稿しよう!