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そして彼女は、いつものぐちゃぐちゃの自分のワンルームのアパートで、ふたたび目を覚ました。 銀髪のロセルが、さわやかに笑いかける。 「おはよう、ミミミ」 「ぎゃー!」ミミミは思わず叫んだ。 「ぎゃーとは何です、失敬な。さあ、早く支度をして。朝食は食べないのですか? それはよくない」 「なんであなたがついてくるのよ!?」 「私がいなければ、あなたは何も改善するつもりがないではないか」 ニコニコ笑いながら、食事内容から顔の洗い方まで、ロセルはミミミの行動の欠点を逐一ビシバシと指摘する。 いつも出かける直前に起きて、いい加減なスキンケアのミミミは、ロセルの指導に従っていると、遅刻寸前だ。 ミミミが文句を言うと、ロセルは意外にしょんぼりした顔で言った。 「気に入りませんか? これもすべて、私の良き妻になっていただくための善意なのですが」 「う。……ていうかあなた、魔法使いなんでしょ。魔法でぱっとキレイにしてくれたらいいじゃない」 「そういうわけにはいかないのです。あなたが自分で自分を変えなければ意味がないのだから」 しかし、とロセルは思い直したように、ふと微笑んでミミミの頬に触れ、額がくっつきそうなほど、ぐっと顔を近づけた。 「!? 何をっ?」 「動かないで。今、魔法で分析しているのです」 ミミミの動揺など気にせず、冷静にロセルは言う。 「今使っているこの化粧水は、あなたの肌に合っていないようですね。ふむ……こちらを」 ふわっとロセルの手から煙が出たかと思うと、その煙につつまれて、一瓶の化粧水らしきものが現れ出た。 「どうぞ。これを使ってみて。ちゃんとこの世界のものですよ。それからこちらも」 言うが早いか、ロセルはそれらのスキンケア用品を、自分の手でミミミの顔に施し始める。 「ちょっと! さっきから勝手に触んないでよ!!」 「しかし、使い方もレクチャーしなければ、あなたのやり方では宝の持ち腐れです。しっかり自分で覚えて」 耳まで火照っているミミミに対し、相変わらずロセルは冷静だ。 その手つきは、まるで美容部員である。
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